県立美術館の開館まで3年、「未来を〝つくる〟美術館フォーラム」美術館の在り方考える

2025年春の開館に向けて3月に着工した鳥取県立美術館のカウントダウン・イベント「未来を〝つくる〟美術館フォーラム」が3月27日、倉吉未来中心で開かれました。県内外の美術館や芸術関係者、芸術イベントのキュレーターが「これからの美術館の在り方や地域連携」について意見発表や活発な議論を行いました。

 意見発表では、滋賀県立美術館ディレクターの保坂健二朗氏が「企画展中心から、飲食可能なロビーや公園のような公共性を備えた『リビングルームのような美術館』『落ち着ける場所』を目指している」、横浜美術館の蔵屋美香館長は「30年前に好景気で全国に多くの美術館が建設されたが、変革の節目を迎えている。障がい者や高齢者など弱者を含む人間の多様性に出会い、『生きる力』を育める美術館にしていきたい」と、今後の美術館の姿を語りました。

横浜美術館は鳥取県立美術館の設計者、槙文彦氏の恩師、丹下健三氏の最晩年の建築。説明する蔵屋館長


 また県教育委員で「鳥の劇場」主宰の中島諒人氏は「建設地が倉吉に決まって正直、人が来るのか、と心配になった」と告白し、「いいお芝居に必ずしも人は来ない」と演劇人らしい分析の上で、「多くの県民の支えが必要。子供たちのラーニング(教育普及活動)の場として、何が美しいものか学べる施設に」と要望。森美術館等のPR広報や芸術イベントのキュレーターとして活躍してきた鈴木潤子氏は「電気、ガス、水道などと並んで、美術館は地域生活のインフラ(社会基盤)。ご当地ラーメンのように人々が地元の美術館を自慢し合う存在になれば」と期待を込めました。

 続くトークセッションでは、バブル時代に建設が続いた各地の県立美術館が曲がり角を迎えている現状が指摘され、「東京にならうのでなく、また誰もが知っている展覧会というポピュリズムではなく、何が幸せなのか、地域に必要なのか、自立して考えられる美術館を」(中島氏)など、地域や時代に寄り添う県立美術館の在り方について活発に話し合われました。

美術館の在り方について意見が交わされたトークセッション