時代の波を生き抜く経営とは?村上裕太郎氏招き倉吉市で「SDGsと経営セミナー」

今年6月に倉吉市の中心部、白壁土蔵群・赤瓦地区に誕生したワーケーション施設「さまざま働き処 坦庵(たんあん)」のオープンを記念して、村上裕太郎慶応大大学院准教授を招いた講演会「SDGsと経営セミナー」(認定NPO法人未来主催)が12月10日、倉吉市明治町の打吹回廊で開かれました。

満席となった打吹回廊コミュニティーホールの会場

講演に先立ち、主催者のNPO法人未来・岸田寛昭理事長が「子供たちと未来のためにまちを元気に、が私たちのコンセプト。その中で仕事をしながら市内観光も楽しめるワーケーション施設を設けました。厳しい時代を生き抜く経営とは何か、村上先生からしっかり学びたい」と挨拶しました。

 村上准教授が教鞭を取る慶応大大学院経営管理研究科は、1962年に慶応大が米ハーバード大と提携し日本で初めて設けられたMBA(経営学修士)ビジネススクール。財務諸表など実践的な企業分析を通じて「時代を生き抜く企業経営」の在り方を研究しています。

 村上准教授は「世を挙げてSDGs(持続可能な開発目標)の取り組みが進められているが、経営学の世界ではESG=持続可能な世界実現のため、企業の長期的成長に重要な環境(E)社会(S)カバナンス(G)の3つの観点が語られている」と前置きし、「日本の企業では近年『欧米並みに』という掛け声でROE(株主資本当期純利益率=その年に株主にどれだけ利益を配分したか)を重視する傾向が強いが、欧米ではむしろ逆に長期的視点に立ち、企業の社会的評価を高めるESGを重視する企業が当たり前になりつつある。日本は3周遅れ」と指摘しました。

SDGs時代の企業経営を分かりやすく解説する村上准教授

 続いて「コロナに強かった企業、弱かった企業」を分析。百貨店、航空会社など実際の企業決算の財務諸表(貸借対照表、損益計算書)のグラフを示しながら、「コロナのような予期しない危機的状況に備えるには、事業の多角化が大切。利益だけでなく人材育成や事業アイデアなどのメリットもある。また、状況に応じて固定費も変動できる柔軟な発想、経営態勢も必要だ」と解説しました。

 このあと参加者らは「さまざま働き処 坦庵」の見学会に参加し、担当者から施設の説明を受けました。

「さまざま働き処 坦庵」を見学する参加者たち