「目には見えないものに価値がある」 松場大吉さん(群言堂創業者)が倉吉で講演 世界遺産・石見銀山の地元でまちづくり

 世界遺産・石見銀山の地元、島根県大田市でアパレル・ブランド「群言堂」を立ち上げ、現在は歴史や景観、マンパワーを生かした独自のまちづくりに取り組んでいる松場大吉さん(70)の講演会が25日、倉吉市内のホテルセントパレス倉吉で開かれました。

開会の挨拶をする井中部会長

 倉吉商工会議所建設業部会(井中紳二部会長)が主催、NPO法人未来、NPOサカズキネット共催。冒頭、井中部会長は「建設業部会で石見銀山を訪ねた際、時がゆっくり流れているような、なんとも言えない居心地の良さを感じた。コスパ、タイパの言葉が溢れている今だからこそ、本当の幸せとは、豊かさとは、文化とは何か、松場さんの言葉に聞いてみたい」と挨拶しました。

長年の企業の取り組みや地元のまちづくりについて語る松場さん

 松場さんは『地元の宝を見つける』と題して講演。1981年に大田市大森町にUターン、妻の登美さんと共に古民家を店舗や社員寮に改修し、94年「群言堂」を創業。「われわれの企業理念は『温故知新』ではなく『復古創新』。古民家の再生も、ただ直して使う(リフォーム)のでなく、人々や若者が目を輝かせるようなもの(リノベーション)、新たな価値観を生み出すものでなければ」と指摘しました。

 やがて同地区が世界遺産に認定され、歴史や古い町並みを活かしたまちづくりの中で、松場さん夫妻の取り組みは注目を集めます。2019年には「群言堂グループ」としてアパレル、飲食、観光の事業を統合。ところが古希を迎えると、経営を息子や娘にすべて譲り引退してしまいます。「その際、『次の世代に伝えたいこと12ヶ条』を示しました。経営者はつねに里山を離れるな、そこで判断せよ。自分の感性を見極め、チャレンジを恐れず、〝根のある暮らし〟をとことん深く耕せ、というものです」

「車中泊しながら倉吉のパープルタウンへ行商に」と創業時の苦労も語りました

 ところが経営は引退したものの、松場さんはじっとしていません。若い世代とまちの防災・教育・福祉・観光に取り組む地域運営組織「一般社団法人石見銀山みらいコンソーシアム」、さらに町内の神社や伝統文化を守り育てる「石見銀山大田ひと・まちづくり事業協同組合」を相次ぎ創設。「いやはや昔より忙しい。70男が若者たちにこき(古希)使われてます」と駄じゃれで会場を沸かせました。

画像や動画も使って石見銀山の地元の取り組みを詳しく説明

 2027年には世界遺産認定20周年、文化庁の伝建群保存地区指定40周年、そして石見銀山発見から500年という大きな節目の年を迎えます。「単なるイベントで終わらせては、未来は創れません。これからは金やモノの付加価値でなく、人々の心を動かす目にはないもの、歴史や文化、〝感動価値〟こそ大切」「私は常に、簡単より難しいこと、早くできることより時間がかかること、便利より不便なものを選びたい」。深い言葉が会場の参加者の胸に届きました。

NPOサカズキネットの里見理事長の音頭で「乾杯!」

 講演会終了後は松場さんを囲んで懇親会が開かれ、倉吉の観光街区「赤瓦」設立に取り組んだ里見泰男NPO法人サカズキネット理事長の音頭で乾杯。SUN-IN未来ウオークをはじめ様々なまちづくりに取り組むNPO法人未来の岸田寛昭理事長がお礼の言葉を述べ、最後に同法人の松田隆副理事長が一本締めを行いました。

お礼を述べるNPO未来の岸田理事長