開館が来月30日に迫った鳥取県立美術館(倉吉市駄経寺町2丁目)で11日、同美術館の南側に隣接した国指定史跡・大御堂廃寺跡の成り立ちや魅力を知るイベントが開かれました。

県立美術館開館記念イベント「よみがえる大御堂~山陰が誇る大伽羅と仏教文化」。地上3階の美術館が完成し、最上階の展望デッキから1300年以上前、飛鳥時代に建てられた大御堂廃寺跡の全容が見渡せるようになったことから、同廃寺跡の知られざる魅力を身近に感じよう、と企画されました。

第1部は「楽しすぎるトークイベント、OH!御堂、すごすぎる!」。はじめに実際に発掘調査に携わった倉吉市文化財課の小田芳弘さんと、昨年秋に倉吉博物館で開かれた特別展「大御堂廃寺 仏教の華ひらく はじまりの寺」のキュレーター、田邊歩さん(同博物館学芸員)の2人が、都に負けない装飾品や鬼瓦の出土品、大規模な僧坊跡や高度な上水道設備から「飛鳥時代の寺院活動がよく分かる」「日本最古の飛鳥寺と同じ伽藍配置で、寺院名(久米寺)まで分かる山陰屈指の古代寺院」とその〝すごさ〟を解説しました。

続いて倉吉博物館・倉吉歴史民俗資料館の根鈴輝雄館長をコーディネーターに、鳥取県出身の声優で「古墳にコーフン協会」名誉会員の八巻アンナさん、歴史コメンテーターの金谷俊一郎さんの3人が、その歴史的な意味と魅力を〝深堀り〟しました。

根鈴館長が「ここは三徳山と大山、両修験道の聖地から流れる川(竹田川、小鴨川)が合流するところ。だからこの土地が選ばれた」と指摘すると、金谷さんは「水は聖なるもの。すごいパワーが集まり、宗教・文化の一大拠点になった」と推理。当時、治水・土木技術に長けた渡来系の勝部氏らが住んでおり、都と通じながら、高度な寺院建築が可能だったのでは、と寺院の成り立ちや背景を探りました。



最後に根鈴館長が「県美の展望デッキにある〝とんがり屋根〟は、古墳群のある向山の田内城跡(仏石山)と大御堂廃寺跡を結ぶ『中心軸』に位置、実は県美は、古代からここに建てられる定めだったのです」と語って会場を沸かせると、八巻さんは「古代の鳥取県に自信が持てました」、金谷さんも「古代山陰の宗教施設群として、ぜひ世界遺産登録を」と盛り上がりました。

このあと第2部では、高さ16㍍、日本最大の掛け軸「大観音大画軸」のレプリカを前に、奈良県の総本山長谷寺の僧侶らが荘厳な声明(しょうみょう、お経に独特の節をつけて歌う宗教音楽)を披露。第3部は大型スクリーンにCGでかつての大御堂の姿をよみがえらせる映像と光のイベントが行われ、古代のロマンを終日楽しみました。


