倉吉でインバウンドツアー始動 欧州で評価の高い『遥かな町へ』を実体験 12月には県美でフランス人招き立食付き講演会

 今年の夏、フランスをはじめ欧州で今も高い人気を誇る漫画家、谷口ジロー氏(鳥取市出身、故人)の代表作『遥かな町へ』の映画ロケが行われたのに伴い、来月から倉吉市で観光庁の支援を受けたプレミアムインバウンドツアーが始動します。谷口作品の世界を実体験するもので、12月には谷口作品の翻訳者で知られるフランス人を県立美術館(同市駄経寺町)に招き、立食パーティー付きの講演会も開かれます。

倉吉市に招かれた仏人インフルエンサーら

 『遥かな町へ』は、バブル経済崩壊後の平成10年、都会の生活に疲れた中年男性が、経済成長期の昭和38年のふるさと倉吉市に中学生としてタイムスリップ、家族のきずな、ふるさとの街の人々との交流をノスタルジックに描いた谷口さんの代表作で、フランスのアングレーム国際漫画祭をはじめイタリア、ドイツなど数々の国際漫画賞を受賞。欧州ではフランス、ドイツ、ベルギー、ルクセンブルグの合作で舞台をフランスの田舎町に移し、ひと足先に映画化されています。 

フランスの町を舞台にした映画「遥かな町へ」のポスター

今回、原作通り倉吉を舞台に映画化される作品は、来年春のフランスのカンヌ国際映画祭にも出展される予定。こうした機運に同市でまちづくりに取り組む認定NPO法人未来(岸田寛昭理事長)が中心となり、観光庁の支援を受けて「地方創生プレミアムインバウンドツアー」を立ち上げました。同ツアーの開発には、県立美術館の運営会社「パートナーズ株式会社」の構成企業・大和リースや、同社の森田俊作会長が理事を務めている一般社団法人ONSENガストロノミーツーリズム推進機構、ANAのグループ企業などが参画。「食と文化、歴史、温泉を楽しむ」ガストロノミーツアーの楽しみが盛り込まれています。

 同ツアー客の受け入れ期間は11月から来年2月まで。谷口氏が描いた昭和の町並みが残る成徳、明倫地区を中心に、映画のロケ地のほか、「はこた人形」の絵付けなど伝統工芸、「餅しゃぶ」など食文化、若者に人気のフィギュアミュージアムなど、旅行者の希望や滞在日数に応じてプログラムを組み、レトロからサブカルチャーまで〝古くて新しい日本、倉吉の魅力〟が味わえます。また12月7日(日)には、鳥取県立美術館で谷口作品の翻訳を手がけたフランス人のイラン・グェンさんを招いた立食パーティー付きの講演会が企画されています。

  欧米のインバウンド客がまだ少ない山陰。すでに9月には著名なフランス人インフルエンサーが招かれ、白壁土蔵群など市内を視察。SNSで情報発信しており、映画が公開される来年にかけて誘客効果が期待されます。

インバウンド誘客の起爆剤となるか、3月の映画『遥かな町へ』制作発表