サウナ・シンポ「ととのう」を科学する 関金温泉で開催~サウナツーリズムで元気なとっとりを

最近「ととのう」って言葉よく聞きますよね。「サウナ」とは何なのか、「ととのう」ってどんな効果があるのか。そしてサウナでみんなが元気になり、全国の人々が交流し、地域活性化や観光につないでいこう。そんなシンポジウム「『ととのう』を科学する!~サウナで健康増進」(関金温泉振興組合主催、認定NPO法人未来、倉吉観光マイス協会協賛、鳥取県、倉吉市など後援)が11月28日、倉吉市の関金温泉「関金都市交流センター」で開かれ、サウナの専門家や首長、観光担当者らを交えて「サウナで開く鳥取の未来」を語り合いました。

【開会挨拶、熱波師・五塔熱子さんからビデオメッセージ】

サウナ・シンポでは、認定NPO法人未来の理事長で関金温泉振興組合の岸田寛昭組合長が、倉吉絣で作ったサウナハットを被って登場。「関金温泉を健康づくりの拠点=ウエルネスリゾートにしようという取り組みの中で、サウナの話が浮上。しっかり学んで地元に広げたい」と挨拶。続いて琴浦町の地域おこし協力隊員で、日本大会優勝、世界大会3位に輝いたプロのアウフギーザー=サウナの中で蒸気をタオルなどであおぎ、利用者に熱気を送る〝熱波師〟の五塔熱子さんから「琴浦町に誕生したフィンランドサウナ『ネイチャー・サウナ』に所属しながら世界を目指しています。山陰の豊かな自然を生かし、サウナの価値観を大きく変えることができれば」とビデオメッセージが寄せられました。

【基調講演「ととのうを科学する!」】

続いて日本サウナ学会代表理事で、慶応大医学部特任助教の医師でもある加藤容崇さんが基調講演を行いました。

 加藤代表理事は「医療費負担が高騰し、予防医療が叫ばれています。でも予防医療は『食事制限を』『もっと運動を』など嫌なことも言われるので長続きしない(笑)。その点、サウナは楽しく続けられ、気が付けば健康になっているもの」と紹介。「日本は今、若い世代を中心に第3次サウナ・ブーム。背景には、健康とは『病気にならない』だけでなく、毎日を高いパフォーマンスで快適に過ごすことだ、という認識の変化があります」と説明しました。

 医学的効果として「心筋梗塞リスクは50%減、認知症リスクは60%減、精神疾患(うつ)リスクは78%減という調査結果があり、心身ともに効果があります」「脳波を調べると、『ととう』とは自律神経を刺激して『頭ははっきり、しかもリラックス』という状態。禅宗の高僧の(悟りの)境地に近いのです」と科学的見地から解説を加えました。

 そして「高血圧や基礎疾患のある方も、事前に医師に相談して入れば、逆に心不全や脳卒中のリスクを減らせます。要は正しいサウナの入り方を知ること」「サウナを楽しんで気づいたら健康になっていた。そんな社会を目指しましょう」と締めくくりました。

「サ道=サウナ道」のTシャツで基調講演する
日本サウナ学会の加藤代表理事

【パネルディスカッション】

サウナ・シンポでは最後に、鳥取県中部医師会の前会長で日本サウナ学会の会員でもある松田隆さん(倉吉市・松田小児科医院院長)をコーディネーターに、パネルディスカッションが行われました(各パネリストの発言を要約)。

「きょうは『サ道』のTシャツを着てきました(笑)。今ちょっと新旧のサウナ愛好者でいさかいもあるんですが、サウナの中では他人に気づかうこと、しゃべらず静かに、というのが『サウナ道』のマナーです。それから、熱くて頭フラフラみたいなのを『ととのう』と言っている人がいますが、それは間違い。サウナはがまん大会ではありません。気持ちよく、その時の自分の体調に合わせて正しく入ることが大切です。

また『サウナと地方創生』も大きなテーマにしています。地方固有の歴史、自然の財産がまだ埋もれたままになっています。サウナとフュージョン(融合)させることでそれらの価値を高められたら。女性が利用しやすいサウナ、またゴミ処理施設などの熱を再利用したサウナなども、ぜひ増えて欲しいですね」

「今日はサウナに新しい発見」と広田一恭倉吉市長

 「加藤先生の話から、サウナはがまん大会じゃない、高血圧やコレステロールにもいいと分かり、大変感謝しています。関金温泉では今ある湯命館のほか、2025年には民間JVを主体に再生される宿泊施設『グリーンスコーレ』にも屋上サウナが設けられる計画です。病気を予防し、また医療費負担を軽減していくためにも、市民の多くの方にサウナの効能を知っていただき、気軽にサウナが楽しめる市になればと思います。

 また大山のおいしい水の出荷量は日本で第3位、『サウナめし』という言葉があるそうですが、美味しい水と県中部でとれる豊富な農産物や食材を使った料理でサウナを利用する人たちをもてなし、将来は交流や観光につなげたい」

「トリピー」サウナハットを被った鈴木局長

 「先日、北海道の十勝で開かれた日本サウナ学会に平井伸治知事も出席しました。鳥取県は今『ととのうとっとりサウナ旅』というサウナツーリズムに県を挙げて取り組んでいます。また鳥取県が変なことを始めたぞ、と周囲からも注目されていますが(笑)、私がかぶっているのは県のイメージキャラクター『トリピー』のサウナハット。県庁内にも「サウナ部」が結成され、数々のサウナ・イベントやサウナ・グッズの開発販売に取り組む県内企業も増えてきました。

 世界3位の五塔熱子さんというまたとない人材に恵まれ、彼女に県の『最高経営アウフギーザー』になっていただきました。県ではサウナに入りながら観光グルメを楽しめる周遊モデルコースなども設けています。グリーンスコーレの話もうかがいましたが、県中部は健康づくりでは県内でも先進地域。補助制度も充実させますので、ぜひサウナ施設を増やしていただき、健康で活気あふれる鳥取県を実現していきたいと思います」

グリーンスコーレ再生を目指す流通(株)の江原社長

 「私たちは関金温泉の宿泊施設『グリーンスコーレせきがね』の運営事業者(指定管理候補者)の優先交渉権者として地元で共同企業体=JVを組み、2025年4月のオープンを目指しています。関金温泉を旅の目的地にしてくれる動機付けとしてJV内でもいろいろ議論しましたが、『星空の見える屋上デッキでサウナが楽しめないか』というアイデアが浮かびました。先ほど屋外に設置されたテントサウナを体験しましたが、川のせせらぎ、風の流れを五感で感じ、自然と相性がいいものだと実感しました。

 大山・星空・名湯といった自然の恵みを背景に、サウナ、サイクリングなど、私たちが目指している施設は多くの点で鳥取県の目指す方向と合致しています。期待を裏切らないよう施設づくりに頑張りたいと思います」

自慢の(?)のサウナ・ハットを披露する松田医師

 「先ほど基礎疾患のある方は事前に医師に相談して、という話が加藤さんからありましたが、サウナの効果など詳しくない医師はまだ多い。身体にも心にもこれだけ効果のあるサウナなので、医学会も今後はしっかり位置づけたいですね。サウナというとまだ男性のイメージがあります。女性も利用しやすい環境は今後の普及に重要。またサウナ・ハットなどサウナ・グッズ類は企業の広告などにも役立ちますから(と言って、地酒の『鷹勇』の名が入った自前のサウナ・ハットを見せる)広げたいですね。

 今回シンポジウムを開いて、日本サウナ学会をぜひ当地で開きたいなと感じました。それまでに私たちはサウナ文化を鳥取県、倉吉市からしっかり発信し、サウナ部を増やしていきたいですね。ウェル・ビーイング=心身ともに健康で、楽しく心地よい暮らしを目指して〝ととのう鳥取、癒しの倉吉〟の取り組みを進めていきましょう」