アートと寄り添う町を目指して 倉吉博物館協会の岡野稔新会長に聞く

岡野さんの会社倉庫に展示された現代アート、原口典之氏の代表作「オイルプール」

倉吉博物館の運営を市民らがサポートする「倉吉博物館協会」の新しい会長に、このほど割箸や什器の製造販売を全国展開する㈱丸十(同市秋喜)代表取締役会長の岡野稔さんが就任しました。会社の倉庫を現代アートの会場に提供するほどの芸術愛好家。「アートは金にならないどころか、まちを豊かに活性化する」と語る岡野さんに抱負や夢をうかがいました。

―会長就任の抱負は?

「経済人の私が会長になったということは、これまでとは少し違う感覚で取り組んでほしい、ということだと思っています。まずは会員増が私の役目と、市内の親しい企業に声をかけ、法人会員を10社ほど増やしました」

―おととしの秋から暮れにかけて、自社の倉庫を県立博物館の現代アートイベントのサテライト会場として提供されたそうですね。

「現代アートの原口典之さん(1946~2020年)はかつて倉吉市内に滞在して活動されたこともあり、知り合いから瀬戸内国際芸術祭の作品を置かせてもらえないかと頼まれました。その後、県立博物館の学芸員からもサテライト会場の依頼があり、他の現代アートの作品を含めて4点の展示を引き受けました。どれも何トンもある巨大な鉄のアートなので、展示や保管場所の確保はなかなか大変です(笑)」

―最近は「アートを活用したビジネスモデル」の取り組みも始められたとか。

「ええ。『現代アートと大型空き倉庫の親和性による新たなビジネスモデルの構築』というプロジェクトです。現在、国の補助金を申請中。展示だけでなく作品の販売にもつながる『まちなかアート』のビジネスモデルを目指しています。県内の幅広い分野のアーチストとのネットワークもできました。軌道に乗ればビジネスとして各地で展開していきたい。経済人として私が切り込める分野だと思います」

倉庫にある鉄の現代アートの前に立つ岡野稔会長。あまりに巨大なので分解して保管

 「アートは金にならない、というのは昔の話です。瀬戸内国際芸術祭もそうですが、今の若い人たちは先入観なく自分の感性を信じて現代アートに接し、多くの観光客が島々を訪ねるようになりました。会員の高齢化が進む倉吉博物館協会も、こうした若い力を積極的に受け入れ、「砂丘社」(※)につながる倉吉の文化芸術の伝統を次代につないでいきたい」

―倉吉市内では県立美術館のオープン(2025年春)も近づいています。

「地域の芸術拠点として一体化し、コラボしていくことが必要だと思います。それが倉吉博物館の活性化にもつながり、互いに相乗効果をもたらすのでは、と楽しみにしています」

 ※砂丘社…旧制倉吉中学(現倉吉東高校)の美術教師だった中井金三を中心に、1920(大正9)年に設立された芸術団体。前田寛治や河本緑石など芸術を志す若者たちが集い、絵画だけでなく詩・小説など文芸の創作、演劇や音楽会の開催など、多彩な芸術活動を展開した。

【倉吉博物館協会の入会案内】

入会希望者は〒682-0824倉吉市仲ノ町3445-8、電話0858-22-4409、同博物館受付へ

会員の種類          特   典              年会費

法人・団体会員   法人・団体と社員及び同伴者の入館料無料、    10,000円

          館発行図録送付

個人 1号会員   加入会員と家族及び同伴者の入館料無料、     10,000円

          館発行図録送付

 2号会員   加入会員と家族及び同伴者は特別展を除き       5,000円

        入館料無料(特別展は割引料金)図録送付

 3号会員   加入会員は特別展を除き入館料無料(特別       2,000円

        展は割引料金)