漫画家、谷口ジロー氏(鳥取市出身、故人)の代表作『遥かな町へ』の映画化(来年秋公開)をインバウンド拡大につなげようと、同作品の舞台となる鳥取県倉吉市で5日、インバウンド向けイベントが行われました。

『遥かな町へ』は、都会の生活に疲れた中年男性が、昭和38年のふるさと倉吉市に中学生としてタイムスリップ、家族のきずなやふるさとの人々との交流をノスタルジックに描いた谷口さんの代表作。欧州では数々の漫画賞に輝き、フランスでは舞台をフランスの田舎町に移し、『Quartier Lointain(遥かな町へ)』(2010年)としてひと足先に映画化される人気で、先日はフランスのテレビ制作会社が物語の舞台となった倉吉市をはるばる取材に訪れました。

この機運をインバウンド客の誘致につなげようと、認定NPO法人未来(倉吉市東仲町、岸田寛昭理事長)が観光庁の支援を受けて「地方創生プレミアムインバウンドツアー」を企画。ツアー開発には県立美術館の運営会社「パートナーズ株式会社」の構成企業・大和リース、一般社団法人ONSENガストロノミーツーリズム推進機構やANAグループも参画し、「食と文化、歴史、温泉を楽しむ」ガストロノミーツアーの楽しみが盛り込まれています。

この日行われたのは「体験型ガストロノミー・ホッピング」。 フランス人やポーランド人、ツアー開発の関係者ら30人が正午、同市東仲町のCoup! la café(クラカフェ/認定NPO未来事務所)に集合。倉吉観光MICE協会の案内で、白壁土蔵群や伝統工芸「はこた人形」の工房、映画で主人公の家となった「中原洋服店」や小川家庭園「環翠園」などを巡りました。

古い商家を改装した「日本料理飛鳥」「町屋清水庵」では、餅しゃぶや懐石御膳など地元ならではの和のグルメを堪能。「倉吉はコミックの風景と同じ」「まるで昔にタイムスリップしたよう」「レトロな日本の情緒にあふれている」と驚きの声があがっていました。

夕方からは県立美術館に移動。同美術館1階の「ひろま」を会場に、谷口作品の翻訳を手がけたフランスのアニメ映画の研究・評論家、イラン・グェンさんと、長年アシスタントを務めた広木陽一郎さんが、谷口ジローさんの画業と日仏の交流について語りました。

イランさんは複製原画を示しながら「(精緻な背景画の)谷口作品を読むと日本の町を訪れたような、知ったような気になる」と指摘。仏漫画界の巨匠・メビウスの知己を得るとともにフランス、欧州の漫画家と積極的に交流した谷口さんによって「日本の漫画がフランスで初めて認められた」とその功績を語りました。広木さんは「貧乏な漫画家生活の中であこがれたフランス。その国で高く評価され、最後は勲章までもらった。幸せな人生だったのでは」と振り返りました。


認定NPO法人未来の岸田理事長は「2026年春のカンヌ映画祭をはじめとする国際映画祭への出品、県立美術館での夏の谷口ジロー原画展(仮称)、秋の映画封切りに連動してインバウンド客誘致に図りたい」と抱負を語っています。
「体験型ガストロノミー・ホッピング」は12月31日まで実施。インバウンド客以外も参加可能で、クラカフェで6,000円(税込)のクーポンを購入すると、レトロな町並みで食べ歩きが楽しめます。参加申し込み、問い合わせはクラカフェ(同市東仲町2571、午前10時~午後4時)、または認定NPO法人未来、電話0858-24-5725 e-mail: civic@npo-mirai.net



















