ビール通、大満足「ホップ農園訪ねるビア・ツーリズム」倉吉観光マイス協会「継続して取り組み、観光の目玉に」

 ビールの香りや苦みを生むホップの農園を訪ね、地元のアユやイワナ、わさび料理に舌鼓を打った後に、倉吉の厳選されたクラフトビールを味わう…ビール通にはたまらない「ビア・ツーリズム」を倉吉観光マイス協会が企画、このほどテスト催行されました。

倉吉市関金町開田で取り組まれているホップ農園

 鳥取県中部、倉吉市はキリンビールの創設者のひとり、磯野長蔵氏(名誉市民第一号)の出身地。同市上北条地区では磯野氏にちなんで「キリン一番搾り」に使われるビール麦も栽培しています。2019年、磯野氏をリスペクトする形で、白壁土蔵群の一角にある古い医院を改装してクラフトビールの醸造所「ブリューラボ倉吉」(㈱倉吉ビール、福井恒美代表取締役)が生まれました。

 そして今年の春、京都大農学部で森林利用学を研究してきた岡田直紀さん(66歳)が、定年退官を機に倉吉市関金町へ移住、「ブリューラボ」と連携したホップの栽培農園を始めました。倉吉観光マイス協会はこれに着目、ビールが生まれる現場から仕上がったクラフトビールまで体験できる「ビア・ツーリズム」の観光パッケージを企画しました。

 日本ビール検定一級の資格を持つ市内の病院勤務のお医者さんから、地ビールを近く醸造したいとはるばる岡山県津山市から訪ねて来た業者の方まで、さまざま。チャーターしたタクシーで一路、倉吉市関金町開田にあるホップ農園へ。

テスト催行とあって、この日はマイクロバスでなくタクシーで移動

 途中、大山や蒜山三座の美しい景色を眺めながら、関金町開田にあるホップ農園に到着。栽培を担当する岡田先生もおられました。なぜ、移住してホップ栽培にチャレンジを? 「面白いからですよ。農学部だけど、ホップ栽培は全く専門外。栽培はネットなどで調べながら(笑)。それが特産物になったら地域貢献にもつながるでしょ」。栽培の日々を楽しんでいるような、明るい答え。

大学を退官してホップ栽培に挑む岡田さん(右)と倉吉ビールの福井社長

 今年4月、10アール(約1反)で試験的に始まった農園は、この地に適したホップは何か、「カスケード」「チヌック」「ザーツ」など世界のホップ10種類を植え、その結果を分析しながら、来年春の本格スタートに向けてデータを集めるそうです。

 倉吉ビールの福井社長が農園で追加説明。「ホップ栽培に適しているのは北緯35度あたりまでというのが定説。関金は35度ぎりぎり。また土壌のペーハー濃度(酸性、アルカリ性)でもホップの種類によっては生育が左右されます」。栽培には細やかな気遣いが必要とか。今年の生育状況を見て、適したホップを株分けし、来年から本格的に栽培に取り組みます。ホップは高さ約5メートルのワイヤーに沿ってするすると髙く伸び、参加者らは各ホップの特長などを聞きながら摘み取り作業を体験しました

実ったホップの摘み取り作業を体験
 

 途中、「日本一美しい廃線跡」旧国鉄倉吉線沿線にある観光案内所で休憩。当時の時刻表など思い出の展示品や案内所裏の廃線跡を見学しました。

 そしてお待ちかね、関金町の日帰り入浴施設「湯命館」内にある飲食施設「白金食堂」で、地元のイワナの刺し身、アユの塩焼き、わさび丼の定食にご対面! どれも同町の山間部の清流で育まれたもの。ふだんは味わえない地元特産、絶品のうまさです。

イワナやアユ、ワサビなど関金特産の山の幸が並んだ定食

 ツアーを企画した倉吉観光マイス協会の塩川修さんは「県中部には天然の食材が多いのに、意外にも、ここでしか味わえない、という自慢の料理コースが少ない。このイワナ・アユ・わさびの定食は新しい試み。都会で食べたらすごい値段でしょうが、ここではツアーの中で楽しめます」。さめ皮おろしでおろし立ての関金特産のわさびを、ご飯の上に。ピリッとした辛みの中にもほんのり甘みを感じる「わさび丼」が完成しました。

 この後、湯命館のお風呂に入るのはオプションですが、参加者全員、サウナを含めて関金温泉のしろがねの湯を体験。「ととのいました!」

山の幸を味わった後は関金温泉の湯に。まさに「極楽、極楽」

 ツアー参加者はこのあと一路、白壁土蔵群にある「ブリューラボ」へ。サウナの後ですから、もう頭の中はビールでいっぱい。

倉吉ビールの山下醸造長から製造工程の説明を聞く

 ブリューラボ倉吉では山下真玄醸造長が待っていました。ビールの製造する各タンクの役割や工程の説明を聞いた後、古い蔵のある庭を眺めながら、お待ちかねのビール・タイム。

 「ゴールデンエール」「ペールエール」「IPA」など自慢のクラフトビールを次々試飲。もう、たまりません。福井社長がそれぞれのビールの個性や製法などを説明してくれます。この日は新しく開発された「マヌカハニー入りのホワイトエール」も試飲させていただきました、さわやかな後味、鼻と舌をくすぐるホップの味と香り、もうビール通にはたまりません!

 企画した倉吉観光マイス協会の塩川さんは「今回はテストケースですが、継続して取り組み、ホップの栽培体験も楽しめるビア・ツーリズムにしていきたい」と夢を語りました。実は塩川さん、東京からUターン組の福井社長から「これからはふるさとの鳥取、倉吉で新しいことにチャレンジしてみないか」と声を掛けられ、大阪からUターンしたそう。

古い町家を改装した「ブリューラボ」。蔵のある庭を見ながら至福のイッパイ

 地元の良さに「ビール」という新しい風を吹き込む観光戦略。ぜひ応援して、県外から多くのビールファンを招きたいものです。参加者へのお土産に「ブリューラボ」の特製ビアグラスをいただきました。